【祝アカデミー4冠】パラサイト 半地下の家族を見ました(ネタバレあり)【祝パルムドール】
こんばんは。
久しぶりの映画レビューは、先日見に行った「パラサイト 半地下の家族」でございます。
ネタバレを含みますので、「これから見に行くよ!」「未見で、BD/DVDリリース待ちだよ!」という方は、見たあとにまたこのブログに来てくれるとうれしいです。
「もう見たYO!」「ネタバレ気にしないYO!」という方はこのあとの拙い感想文にお付き合いくださいませ(^-^)
あらすじ
第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編
ここが好き①貧乏家族のみなさん
お金はなくても、お金で買えないようなものをたくさん持っている貧乏家族のみなさん。
作中では詳しく語られていませんが、父ギテクが事業に失敗して今の生活になる前は
実はエリートな家族だったのかも…?って思いました。
少なくとも母チュンスクは元砲丸投げの選手としてメダルもとれるレベルの教育が受けられる環境で育ったかなと。。
※管理人の個人的な意見ではありますが、一握りの成功を掴むような努力ができている人は
思い切り努力できる、たくさんの経験を積むことができる、環境に恵まれた人だと思っています。
話が若干それてしまいましたが、美術のセンス(偽造関係ですが…)がピカイチの娘ギジョン、話術や立ち回りが天才的な息子のギウなども含めて、家族みんながキャラがたってて誰一人欠けてもいけない家族であることを、説明っぽさ無しに表現してて素晴らしいなと思いました。
ここが好き②半地下の家と近所
よその家のwi-fiが微妙に入ったり入らなかったりするところが現代的でしたが、
家のなかの殺風景っぷりが妙に身近に感じられて、「そこに家族の営みがあるんだねえ」っていう人懐っこい空気が流れてて。。
でも、窓を開けると空気だけでなく良くないもの(立ち○○とか)も入ってくる、なんだか「ほんとは人が住むところじゃないんだよ~」という立地条件で、その矛盾がまたなんかおもしろくて。
近所にも半地下に住んでいる人がたくさんいて・・・下町のような空気が漂っていて
住みづらそうだけれど、何だか良いところに見えていました。
ここが好き③みんなで地下室に連れて行かれるあのシーン
お金持ち家族がみんなで家族旅行に行っているスキに、貧乏一家が豪邸に集結して酒盛りしてるシーンも好きなんですが、
そこからのピンポーン→ピポピポピポピポピンポーン→前任の家政婦さん来訪→忘れ物をとりに倉庫へ…→全然戻ってこない→!?!?の流れも大好きです。
最初、倉庫で自死でも試みているのかと思ってヒヤヒヤしてたのですが…
隠し扉を出すためのあの体勢!(*_*)
思わず吹いてしまいました。←迷惑客
そして新旧家政婦コンビで協力して扉をあけるところは目が離せず!
思わず前のめりになりました。←迷惑客
たしかポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」でも、用水路のようなところにある遺体を発見するとき真っ暗なところからの描写だった気がして
真っ暗なところの先への「何があるんだろう…?」って観客側を釘付けにさせるのがかなりお上手なんだなって改めて思いました!
ここが驚きⅠ:地下の家族
半地下の家族ならぬ地下の家族の存在に驚きました。
しんどい時に「もっとひどい状況の人はたくさん居る」と考えて安心する人もいるかもしれないですが
実際に想像もつかないようなひどそうな環境で暮らしている人を目の当たりにしたとき、何を思うのだろうか…?ってふと考えてしまいました。
こんな生活絶対イヤ!なのか、明日はわが身なのか、こうならないように気をつけようなのか…はたまた、まだ自分は大丈夫と思うのか…。
今作における地下の住人(前任の家政婦の夫)は自分の境遇を悲しむどころか順応していて、しかも豪邸の持ち主のお金持ち家族を崇拝しており
毎晩お金持ち家族の帰宅とともに独特な掛け声をしつつお迎えのランプ点灯のスイッチを押してて…独特でした。でも、ある種の幸せを手にしているようにも見えました。
この作品を見たことによって、他人である自分がどう思うかだけでなく、
当事者がどう思っているかというところに想像力を膨らませる癖をつけてみようと思いました。
ここが好き④コメディ的な攻防シーンたち
お金持ち家族の豪邸の地下室に人知れずひとつの家庭が築かれていたことが判明し、
さらに前任の家政婦さんに貧乏家族の正体がバレてしまって、お互いを追い出すための攻防が始まります。
スマホの「送信」ボタン=核のボタンというギャグや、北朝鮮中央テレビのアナウンサーのものまね(かなり似てる)など、韓国で北朝鮮パロディがエンターテイメントになっているのか…!!と驚いたとともにめっちゃ笑ってしまいました。館内もドッカンでした。
(昔、日テレでブラックワイドショーという番組があって、律動体操をはじめとした北朝鮮のおもしろネタを毎週のようにやってたのを思い出しました)
ここが好き⑤机の下で・・・
攻防を繰り広げていたら、大雨により突然の帰宅をはたしたお金持ち家族。
大きなリビングで、庭でテントをはる息子ダソンを見守るお金持ち夫婦・・・。
そこで思わぬ一面を我々は貧乏家族と共に見てしまうことになります。
表向きはとっても品が良くて優しい夫婦。でも、実は我々(庶民)とあまり変わらない面もたくさん持っていた・・。よくも悪くも。
とってもセンシティブな話になりますが、においの問題は私も自分の体臭とかすごく気になるほうなので、
万が一自分のにおいについて他人からの評判を聞いてしまったらショックを受けるでしょう。
本来、他人同士で越えてはいけない一線の向こう側の話・・・のはず。
もちろん本人が居たら言わないような話ですが、机の下にいる=居ないことになっているので、悲しいけど仕方ない場面でした。
そしてこの「におい」が、お金持ち家族と貧乏家族の間にある大きな溝であることが明るみになりました。
(今作におけるにおい=半地下に長年住んでいるため染み付いたカビのようなじめっとしたにおいのことをさすと思われます)
また、突然のラブシーンは貧乏家族のみなさんも我々とともに「何を見せられている(聞かされている)んだろう・・・・・」という気分になっていたのではないでしょうか。(-_-)
そういう意味でも「この夫婦も我々と同じ人間なんだな」って感じでまたおもしろかったですね。
ここが好き⑥大雨
大雨のシーンは、豪邸から脱出した貧乏家族がどんどん階段を下りていきます。
これは、豪邸でやんややんや酒盛り、一家団欒の時間(天国)から、浸水してドロドロになってしまった大事な家を目の当たりにする時間(地獄)への転落を示しているように思いました。
住み慣れた家の9割が浸水、ほぼ肩まで浸かるって、とっても悲しい。思い出の品物だって水浸しです。
そんな中、娘ギジョンの「汚水が溢れる便器に座ってタバコを吸う」という姿はこの作品屈指の素晴らしいカットでした。
もう、いろんな意味でどうしようもないところまで来ちゃってる。でも、タバコを吸うと思いのほか冷静になれる。もはやどうにでもなーれみたいな表情にすら見えてとても美しかったです。
そんなわけで貧乏家族は絶望のまま、不本意ながら体育館へ避難してみんなでザコ寝で一夜を明かします。
この大雨のおかげで散々な目にあいました。
でも、同じ大雨でもお金持ち家族のママにとっては、スモッグを取り除いてくれて
息子ダソンのお誕生日にふさわしい青空にしてくれる雨でしかありませんでした。
ここでお金持ち家族のママと貧乏家族の父ギテクとの間に、またもや埋められない溝があることがわかりました。
ここが驚きⅡ:悲劇のあとに
お金持ち息子のお誕生日パーティの途中で、地下から復讐の鬼と化した前任の家政婦の夫がやってきて最低な事件を巻き起こしました。
そのとき、金持ちパパのとあるしぐさが、ギテクの心に追い討ちをかけます。
そしてさらなる悲劇をたくさん生み出していく…。
・・・・。
ラストのモールス信号のお手紙の返事では、すごく希望の溢れる映像(豪邸を買い取って地下に迎えに行きます的なところ)と、その直後に流れるとっても寒々しい、半地下の家での映像。。。
現実ってこんなに厳しいんだっけか?そうだよねぇ…ってすごくむなしくなりました。
前半のコメディみたいなところからここまで突き落とすかー…。って驚きました。
で、本編では描かれていないんですが個人的にはパパの亡くなってしまった金持ち家族のその後も気になるところです。
とってもキレイで「シンプル」なママと、二人の子ども…。
しっかりした企業に勤めていて、しっかり家族ともコミュニケーションもとって頼もしかったパパが居なくなってしまったらどうなるのやら。また、PTSDとかそういうところもすごく心配になりました。
今回の作品では、貧乏家族がお金持ち家族に「寄生」していくようなお話ではありましたが
同時に、お金持ち家族も貧乏家族の能力に「寄生」していたように思います。
持ちつ持たれつというやつでしょうか?私たちも普段の生活は言い換えれば寄生しあっているのかも。
「寄生」というと聞こえは悪いですが、支えあい、助け合いなのかもしれない。
残されたどちらの家族も、またどこかに「寄生」したりされたりして生きていくのかもしれないですね。
まとめ
最初から最後まで、ずっと目が離せなくなるような展開でした。
この映画を見た理由は、映画好きな中学の友人が「私は合わなかった」と言っていて
見た映画の99%を褒める友人が合わないってどんな映画だろう?って思って気になったのがきっかけでした。
見事に私には合いました。
ハッピーエンドではなかったし、絶対的なヒーローも絶対的な悪人もいなくて
みんなどこにでもいる人間だったのが良かったです。
もちろん貧乏家族のとった行動や地下家族の二人の行動も善人の行動ではないですが
それでも生きるためにみんな必死に頑張っているんだって言うのは伝わってきました。
だから、不思議と応援してしまうし、失敗してしまえばそれは残念だと思ってしまいました。
それにしても、前半の金持ち家族に寄生していく部分と、中盤の地下家族との攻防、後半の金持ち家族との溝が明るみになる部分と、
それぞれが違う顔をしていて、それでもひとつの作品としてしっかりまとまっているところが素晴らしかったです。
韓国映画は数多くは見ていませんが、レベルの高さを思い知ることができました。
今後も注目してまいりたいと思います。
と、いつもどおりうまくまとまらなかったですが、感想はこのへんにしようと思います。
でも最後にひとつだけ言わせてください。
お金持ち家族の息子ダソンがランプのモールス信号「たすけ・・」を読み取っていたのは伏線じゃなかったんかー!!
私はあれが希望の光でした。
でも何も回収されぬまま終わってしまいました。
なので妄想のシーンをひとつ作りました。←迷惑客
ダソン「あのランプ、『たすけて』って言ってるよ」
パパ「ランプがSOSなんか出さないよ。ダソンは感受性豊かだな~ハッハッハッ!」
ダソン「・・・(腑に落ちないけどしぶしぶ納得する顔)」
(↑地下家族と金持ち家族の明らかな断絶を説明するシーン)
以上、拙い映画レビューでした。
ここまで読んでくださった人は、どうもありがとうございました~